昨年、棕櫚亭は開所から30年を迎えました。それを記念し、4月23日(日)立川グランドホテルで30周年記念イベントを開催いたしました。当日は130名近くの方々にご出席いただいた盛大なものとなりました。内容は二部構成でお送りし、日頃お世話になっている皆さんに、楽しんでいただける企画にいたしました。
第一部「天野聖子 最終講演」・・・・
ここでは天野前理事長に今まで語る事がなかった、精神病院時代の15年間を語っていただきました。今から45年前、精神障害者の人権なんてないに等しい頃、収容所の様な病院と、どのように闘ってきたのかをお話しして頂いたのですが、天野さんの口調は、いつもの力強いそれとは違い、当時の思いを一言一言噛みしめる様なものでした。さらに格闘の末、病院の開放化に成功しても、まだまだ精神障害者が地域で当たり前に暮らしていくには程遠い現実、それとの更なる闘いが、棕櫚亭開所につながっていった事も改めて知りました。講演は、一時間という短いものでしたが、当時出会った患者さん達に後押しされる様に話す天野さんの姿は、その時代を知る者の強い使命感を感じました。
第二部「棕櫚亭30周年記念パーティー」・・・・
二部はがらりと趣向を変え、「棕櫚亭30周年記念パーティー」を開催しました。三幕で構成し、1987年の開所から現在までを振り返りながら、最後は新体制のお披露目もいたしました。
まず一幕目は、「同窓会」と銘打って、創設世代の職員3人が舞台に上がり、出会いから作業所開所、そして、法人化までの出来事を当時のスライドを交えなが語りました。開所した頃は資金がなく、そのためバザー、コンサートなど周りの人々を巻き込みながら、様々な取り組みをしてきた棕櫚亭ですが、その最初の10年を途中、当時お世話になった方々へのインタビューを交えながら振り返りました。本当にたくさんの人達に支えられながらここまで来た事を、改めて感じた一幕でした。
そして、場面は二幕目へと移り、ピアスを開所し、就労支援に試行錯誤してきた次の10年間にスポットを当ててお送りしました。厚生労働省の関口彰さん、全国就労移行支援事業所連絡会会長である電機神奈川福祉センター理事長石原康則さんからは、今までの取り組みへの高い評価や、次世代への力強いエールいただきました。ここ20年、精神障害者の就労支援に邁進してきた棕櫚亭ですが、これらの温かいお言葉は、私達が次に向かうエネルギーとなりました。さらにこの幕では、「当事者のちから」と題したコーナーを設け、オープナー登録者の風間頼高さん、内藤篤子さん、そして、棕櫚亭ピアスタッフの櫻井博さんが次々と壇上にあがり、自分たちの体験や棕櫚亭との出会いなどを語りました。「病気に揺らされなくなった自分」「生活を楽しめるようになった自分」さらには「病気になった事でもう一度人生を生き直し、今、新しい価値観で生きている」など、体験したものならではの力強い言葉の数々に、会場は深い感動に包まれていきました。
そして最後の三幕目、棕櫚亭がこの10年間取り組んできた組織継承についてのご報告いたしました。まず天野前理事長から、その時々の思いと共に「なぜ組織継承が必要なのか?そして、なぜ、次世代の職員に理事長職を引き継いだのか?」などが語られました。最後となる天野さんのこの挨拶に、会場の誰もが静かに聞き入っていました。そして次に、マイクが私の元に渡ってきました。直前まで「どんな話をしたらいいのか?」と迷いましたが、「ここはこれまでの10年を率直に話そう。」と決め、継承の覚悟をなかなか決められなかった事や、その際頂いた叱咤激励の言葉の数々、そして必死で頑張った最後の二年間についてなどをお話しさせていただきました。舞台には、次の組織を一緒に担う、高橋、荒木、山地の三人も並び、最後は職員一同と共に、全員で挨拶をさせて頂きました。会場は大きな拍手に包まれ、日頃から棕櫚亭を温かく見守ってきてくださった皆さんに見守られながらの継承となりました。「あ~、棕櫚亭って愛されているんだなぁ・・・」、そんな事を改めて実感しながら、これからもそうある組織でなければならないと強く思った瞬間でした。
会の最後は、棕櫚亭の職員・元職員で結成された「ゆるさバンド」と、オープナー登録者の君成田隆志さんが登場し、「In My Life」、「You Got a Friend」、「Stand By Me」の三曲が演奏されました。一つ一つの旋律が心に沁み渡り、会場は静かな熱気が漂っていました。そして最後、今までお世話になった方々への感謝を込めた、エンドロールが流れる頃には、拍手と共に会場は一体感に包まれていきました。パーティーの幕が下りた後も、皆さん別れを惜しむかのように、皆さん口々に「楽しかった!」「棕櫚亭らしい会だったよ~」とお褒めの言葉をかけてい頂きました。私達職員にとってもとてもいい会となりました。
あれから一週間以上、私の中にはあの時の高揚がまだ少し残っています。多分そこには、棕櫚亭をより良いものにしようと走り続けた創設者達のエネルギーと、それを温かく見守ってきた方々の愛情が詰まっているのだと思います。だからそれを大事に持ち続けながら、さらに走り続けます。これからもどうぞ棕櫚亭をよろしくお願いいたします。
皆さんへのたくさんの感謝をこめて・・・ 理事長 小林 由美子