9月の末に連日、当事者の方々の訪問がありました。(詳しい内容は、9月27日、28日にすでに公開されている櫻井さんの記事をお読みください。)
お一人は宮内さん、国立市在住の方です。現在、市内初になる依存症の自助グループを立ち上げようと奮闘されています。ご自身も発達障害とギャンブル依存を抱えていらっしゃいますが、自助グループに出会い、回復した体験をもとにグループ立ち上げを考えたそうです。「どんな依存症でも広く受け入れ、様々な方が利用できるグールプにしたい。」と、訪問時に熱い思いを語ってくださいました。
もうひと方は、青梅市で「ぶーけ」というピアサポートグループの活動をしている松井さんです。仲間の方々と5名で来所してくださいました。「ぶーけ」は10数年前から、当事者活動を続けている団体ですが、今、過渡期を迎え、今後どの様な方向に進めていくのかを検討している最中との事でした。「活動を発展させていくためには、経済基盤の安定がとにかく大切」と、話される姿は正に経営者。こちらもまた熱い思いを語ってくださいました。
そして先週、ピアスOBで現在、ピアサポーターとして活躍している塩田由美子さんからメールをいただきました。そこには、メッセージと共に、都が発行しているミニ通信が添付されていました。中身を空けてみると、彼女が多摩総合保健福祉センターのデイケアプログラムで、講師を務めた時の様子が掲載されていました。統合失調症で何度も入院をしたり、薬をやめて病状悪化してしまった事、それでも自分ができる事があると始めたピアサポーターの活動の様子など、様々な体験をお話された様です。結果は大好評。メールにも「当事者の自分がそこに居させていただけて、なんらかの役に立てることは、うれしいし、やりがいを感じています。」とありました。
この2週間の間に相次いで聞いた当事者発信の言葉、そこには力強さがありました。
今、平成30年の精神障害者の雇用率算入に向けて、障害者雇用の現場は大きく揺れています。規制緩和後の就労移行支援事業所の乱立や、障害者を専門にした転職サイトの活況さなども手伝って、どこに向かっていくのか混迷を極めています。今まで私達が大切にしてきた就労支援のスタイルなどとは関係なく、時には禁じ手としてきた様な手法で支援が進んでいく現状を見ると、自分たちの手詰まり感さえ感じます。
そんな矢先に続いた当事者発信の言葉の数々。それは私に「なんだこの人たちがいるじゃない!」と気付かせてくれるものでした。以前、天野前理事長にこんな事を言われたことがありました。「あなたはメンバーの事をまだ信頼しきれていないのよ。」と。そう忘れていました。福祉市場は混迷を極めていますが、それとは関係なく当事者は前に進み、着実に力をつけている事を・・・・。
「ぶーけ」の方々がいらした時に、棕櫚亭のピアサポートグループ「SPJ」との懇親会がありました。その時、あるSPJメンバーがこんな質問を投げかけました。「私達は何をしていけばいいんだろう?」、それに答えて松井さんは「とにかく続ける事だよ、細々でもいいから・・・・」と話されました。その言葉は、少々泥臭くても、前に進んでいく体験からしか生まれないものだと思います。そして同時に「私もとにかく続けなくては。前に進んでいかなくては。」と、私自身に渇を入れてくれるものでもありました。 (理事長:小林 由美子)
追伸:棕櫚亭のホームページで新しい連載が始まります。棕櫚亭当事者スタッフの櫻井博さんとスタッフの荒木浩さんが、往復書簡の形をとって、互いの意見を交換していきます。荒木さんからの手紙に返信する形で、櫻井さんの当事者発信が始ります。スタートは今週水曜日です。是非ご一読ください!!