平成29年2月24日、年度最後の多摩就労研究会を行いました。
いつもの会場を飛び出し、拡大版として講演・実践発表・フロアとのディスカッションを企画しました
この「就労研」は、各機関の実践者が主体的に参加し、本音で語り互いに切磋琢磨し連携を図ることを目的にしています。
以前、行っていた「就労研」をバージョンアップし今回、多摩地区にある障害者就業・生活支援センター(中ぽつ)3つが協力し、多摩地区の就労支援機関、医療関係者に呼び掛けし年4回程度の定例の研修会をおこなっています。
今回は、いつもより多め、そして議論できるくらいの45名が参加しました。
拡大版のテーマはやはり「精神障害のある人の定着支援」
まず、文京学院大学の松為信雄先生に講演していただきました。先生の幅広い視点で来るべき平成30年をどのように乗り越えていくのか、現状の問題点や今後の課題、支援者に望まれること・問われることを見事に分析し分かりやすく講演いただきました。福祉から雇用の流れを「キャリア」の概念で抑えること、「パラダイム(見方)を変える」ことがこれからとても大事になるというメッセージをいただきました。
講演と実践報告の間をつなぐキックオフにタラントの野路氏が「精神障害のある人の定着を考える上で定着率の問題に触れ、就労までの流れを図式化したもので説明し、整理して後半が始まりました。
実践報告では大阪精神障害者就労支援ネットワークの金塚たかし氏と就労移行支援事業ピアスの高橋しのぶ氏より報告してもらいました。
金塚氏からは、大阪での実践と支援の基本に触れ、雇用定着には信頼関係を作っていくこと・語ることで精神障害のある人は元気になっていくこと・支援者として何故就労支援を取り組むのかを報告いただきました。
また、高橋氏からは「精神障害者の定着支援からみえるもの」をピアスの利用者で3年以上定着している方の支援量をデータ化し、お話しいただきました。精神障害者の支援の量は年数に関係なく減らない事実は分かっていながらも、衝撃でした。
その後ディスカッションでは信頼関係を築いていくことの大切さ、だからこそできる支援があることなどそれぞれの視点から意見をいただきました。
今回の懇親会は「講演を通して感じたそれぞれの思いを熱いうちに語り合いたい」と思い会場を変えずにデリバリを頼み、立食形式で行いました。参加者の半数以上の方々にご参加いただき、講演の時間では消化しきれなかった疑問や思いを語り合うことができました。
私は松為先生とお話しさせてもらい、地域ネットワークをつくる上で大切な四つのポイントを教えていただきました。
①目的の共有②情報の共有③思いの共有④ノウハウの共有です。
共通の目的をもって、情報交換をしながら思いを分かち合い、それを実現化するためのノウハウを共有することでネットワークがつくられていくということを教えていただき、感銘を受けました。多摩地域のネットワークを作っていくため定期的に集まっていますが、私自身ネットワークがどう作られるものなのか、またどういったものがネットワークというのかよくわかっていませんでした。そんな中、松為先生のお言葉を聞いて私のなかで漠然としていたものが少し見えてきたように思います。
4つのポイントから考えると今後、多摩就労研で取り入れたいことはノウハウの共有だと感じました。そのために実際の現場で当事者とどう関わっているのか、組織としてどのような取り組みをしているのか、各機関の具体的な事例を伝え合う機会を提案してみたいと思います。多様なニーズへの対応が必要とされている今、当センターだけでは対応できないことも他機関からの知恵を借りることで問題解決への糸口をみつけられるかもしれません。
本田 美咲