「精神障害者の就労定着」これは今、障害者の就労支援の喫緊の課題です。しかし裏を返せば、精神障害者が当たり前に働くことが出来る時代になったということです。そして、こんな状況を今から50年前に誰が想像したでしょうか?
1964年に起こったライシャワー事件、これは当時の精神医療の在り方に大きな影響を与えました。「精神障害者を野放しにしておいていいのか?」今から考えれば何とも差別的なものですが、そんな議論が巻き起こったと当時の新聞記事は伝えています。さらに翌年(1965年)施行された精神衛生法の改正にも、紆余曲折があったと伝えられています。そして国策はこれを契機に、精神障害者の隔離収容に大きく傾き、精神病院が乱立されていきました。5月28日中央法規出版から発売となる棕櫚亭3冊目の書籍・天野聖子著・多摩棕櫚亭協会編集「精神障害者のある人の就労定着支援~当事者の希望からうまれた技法~」は、まさにその約半世紀前から話しが始まります。
閉鎖的な病院内、しかしその様な中でも当然あった「退院したい!」「自由な生活がしたい!」「働きたい!」という当事者達の希望の数々。この本にはそれを叶えようと奮闘する一人のワーカーの姿が描かれています。そして、そのワーカこそが棕櫚亭創設者そして前理事長である天野聖子さんです。しかしそれらの希望が実現するのは、その奮闘から約20年後の1987年、棕櫚亭Ⅰ開所まで待たなければなりません。この様に、棕櫚亭が現在行っている活動の多くは、病院内に埋もれてしまった多くの希望、そして叶わなかった無念からうまれたものです。
またこの本は、一冊三部構成となっており、上述した内容は第2部に収められています。第1部には、棕櫚亭が1997年から20年の歳月をかけて蓄積してきた就労支援・定着支援についての内容を、第3部には棕櫚亭Ⅰ開所から組織を作り上げ、次世代へ継承してきた30年をたどりながら、そこに詰まった人材育成や組織作りの考え方やノウハウを記しています。どれをとっても、今福祉の現場で働く方、これから働きたいと思う方に興味深い内容になったと自負しております。ぜひご一読下さい。そしてこの本が、「精神障害者の物語は、全てここから始まった」と皆さんに再確認して頂けましたら幸いです。
(理事長 小林 由美子)
※発売は5月28日ですが、先行予約は当法人のHPより5月10日から開始いたします。
詳しくは ↓ (予約開始前につき、SOLD OUTとなります。5月10日をお楽しみに!)