相模原事件を振り返る
あの悲惨で許されない事件から一年がたちました。
あの時、コンビニに走り、そこにある全ての新聞を買ってきて読んだのが思い起こせられます。
事件報道された当日、自分が当事者スタッフとして棕櫚亭に雇用されている職場も失われるのではないかという、恐怖に襲われました。精神障害の当時者が凶悪な事件をおこしたことが気にかかりました。
私は措置入院ではなかったですが、医療保護入院を経験し、地域で暮らし10年あまりたちます。精神障害の方の支援をしていて、当事者がスタッフとして働いていることが、当事者の親御さんから、「櫻井は大丈夫なのか?」というふうに思われるのではないかということを考えました。
彼が起こしたことは許されない事件ではありますが、精神障害で措置入院を経験したということが、引っかかりました。病気を語ってはいましたが、急性期にあって犯罪を起こす限りは病気とは思えないという思いがあります。精神症状が長い間、急性期でない限りは本人の考え、思想的なものが原因かと思えたのも、いろいろな方の文章を読んだからです。
ピアスタッフの存在が追い風であった風潮に水を差した事件でもあり、私はより気持ちを引き締め仕事に打ち込んだ一年でもありました。
また障害者の立場では、健常者に襲われるのではないかという不安があることも、メンバーさんと語りあいました。
スタッフでこの事件を話しあった当時、目の前のメンバーさんに届けられるサービスを提供し、できる限り不安を取り除こうという考えを共有しました。
事件を起こした容疑者の優性思想とかは私は間違っていると思いますが、ネットとかでこの容疑者の行為に理解を示す人の存在も知っています。
衆議院会館にスタッフ数人で「集い」に行ったのも多様な理解を知る意味もあったからです。そこである当事者は「命にそもそも価値をもたせるのが間違っている」ということを言われました。命はそこにあるもの、というあたりまえのことを語っていました。
命を取り巻く様々な人間関係を考える時、その重さをひしひしと考えながら一年を振り返りました。この事件を風化させず、自分の胸に刻んだ一年でもありました。
(ピアスタッフ 櫻井 博)